映画『正直不動産』を観て
〜私がこの作品を嫌いになれない理由〜
初めて「正直不動産」を見た時、正直に言うと吐き気がしました。
当時の私は宅建業者へ入社し、不動産業界の現実を知ったばかりでした。
それまでにもブラック企業は経験していましたが、不動産業界で見た光景はそれ以上に衝撃的でした。
その後、不動産鑑定には関わり続けたものの、
「宅建業者には二度とならない」
そう思っていました。
しかし不思議なことに、「正直不動産」だけは嫌いになれませんでした。
読むと嫌な記憶が蘇る。
でも続きが気になる。
それは私自身が、本当は不動産という仕事そのものを嫌いになれなかったからだと思います。
ショートストーリー
①海外不動産投資詐欺
映画では海外の投資物件を購入しようとする顧客を主人公が救います。
現地で調査した結果、その案件が詐欺だったことが判明します。
私が感じたこと
不動産は高額商品です。
だからこそ「儲かる話」には常に詐欺が付きまといます。
海外不動産に限らず、
- 利回りだけを強調する営業
- リスク説明を省略する営業
- 都合の悪い情報を隠す営業
こうしたものは現在でも存在します。
正直不動産が伝えたいのは、
「売ることではなく守ること」
なのだと感じました。
②定期借家契約の落とし穴
安い家賃だけを見て契約したミュージシャンの卵。
契約終了後に更新できないことを知り、不動産会社へ不満をぶつけます。
実務で思うこと
これは宅建士として非常に考えさせられる話でした。
法律上は説明していた。
しかし本当に理解してもらえていたのか。
重要事項説明は単なる読み上げではありません。
相手が理解し、納得して初めて説明が完了したと言えるのではないかと思います。
③現代の立退き
映画に描かれる立退き交渉。
手法は変わっても本質は昔から大きく変わっていません。
私が感じたこと
立退きは単なる不動産取引ではありません。
そこには
- 暮らし
- 思い出
- 人生
があります。
だからこそ重要なのはお金だけではなく、
「この人が次に幸せに暮らせる場所を見つけられるか」
なのだと思います。
映画で描かれた解決策は理想論に見えるかもしれません。
しかし仲介業者として本来目指すべき姿だと感じました。
本編
農地転用プロジェクト
映画の核となるエピソードです。
担い手不足で放置される農地。
大規模開発による地域活性化。
その一方で土地に人生を捧げてきた農家の存在。
開発か保存か。
映画はその二択ではなく、
「両方を尊重する方法はないのか」
を問い掛けてきます。
美味しいトマトが象徴するもの
この映画で印象的だったのは「美味しいトマト」です。
単なる農産物ではありません。
そこには
- 生産者の想い
- 地域の歴史
- 土地の価値
が詰まっています。
不動産は土地や建物を扱います。
しかし本当に扱っているのは人の人生なのだと改めて感じました。
私が願う「優しい世界」
正直に言うと、不動産業界はまだまだ変わっていません。
もちろん昔より改善された部分もあります。
しかし、
- 古い営業手法
- 利益優先の考え方
- 業界特有の閉鎖性
は今でも残っています。
私自身も「ホワイト企業」に見えた会社へ入り、結果的には大きく失望しました。
だからこそ現在は不動産エージェントとして活動しています。
それでも私は希望を捨てていない
映画のラストで主人公は退職ではなく、残る道を選びます。
それは会社への忠誠心ではなく、
人との信頼関係を信じたからだと思います。
「優しい世界」
「美味しいトマト」
この映画を象徴する二つのキーワードは、
私自身がこれからの不動産業界に願う姿でもあります。
売るための不動産ではなく、
人の人生に寄り添う不動産。
正直不動産のような信頼関係を築ける業界になることを願いながら、
私も微力ではありますが、その一助になれればと思っています。